香川と岡山の島などを舞台とした3年に1度の現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭2025」が開かれている。8月31日までの夏会期には、今回から新たに引田エリア(香川県東かがわ市)と志度・津田エリア(同さぬき市)が加わった。瀬戸内の文化や暮らし、景観などに刺激を受けて制作された独創的な作品を紹介する。
マリーナ・モスクヴィナ「てぶくろの童話」
レオニート・チシコフ「みんなの手 月まで届く手袋を編もう!」
手袋が特産のまち、香川県東かがわ市引田にある「東かがわ手袋ギャラリー」が、宇宙への出発点に変わった。
背丈の2倍近くある巨大な手袋は、天井に設置された三日月に今にも手が届きそうだ。
ロシア出身のレオニート・チシコフさんとマリーナ・モスクヴィナさんらがこのギャラリーを芸術空間に昇華した。手袋が宇宙をめざすという物語を書いて絵本を制作したマリーナさんは「糸は記憶の糸。思い出を表す」と話す。レオニートさんが物語を作品として具現化した。
市民ら約350人の古着を裂いてリボンにし、市民と一緒に手を動かして巨大手袋を編み上げた。手袋の色とりどりの一層ごとに、誰かの思い出が詰まっているのだろう。
手袋の正面にある急階段を上った先の2階は「月面」になっている。着陸した手袋が残したものなのか、月面を表す砂に手形が一つ、残されている。
作品展示に合わせて、ギャラリーの内装もがらりと変わった。市内で手袋制作に使われていたミシンや金型といった文化財など約900点が整然と陳列された。東京芸大特任准教授の宮崎晃吉さんと、顧彬彬(コピンピン)さんが内装の設計を担当した。薄暗い室内に機械の機能美が光る、わくわくする空間作りも見どころの一つだ。
引田(東かがわ市)【アクセス】
引田(東かがわ市)【アクセス】最寄りのJR引田駅から徒歩7分。会期中の土日祝日には津田エリア(さぬき市)との間で無料のシャトルバスが運行される。最寄りのバス停「つばさ交流センター」からは徒歩3分。